今回のAEFAはフォーラムは、パートナーNGOを日本に招聘し、AEFAとパートナーが行っている活動を参加者に共有し、様々なストーリーを結び付け、多角的に子どもたちの未来を考える、というものだった。中でも「ベトナムの少数民族の子どもたち」という視点を通して未来を見つめる、というテーマから、私たちはこのAEFAフォーラムに招へいいただいた。第三者(パートナーNGO)からの声、ということで、ドナーの皆さん、あるいは様々なボランティア・支援活動に関心のある団体、個人の方々がベトナムについて、あるいは発展途上国の教育事情・事例について、これまで直接知る機会のなかった方々にも情報を共有できる機会となったのではないか。
CSDにとってプレゼンの準備は大きな心配事だったが、AEFAから大変熱心な助けを得た。私たちは、このイベントはとても重要なものだと理解していた。皆さんに何らかのインスピレーションを与え、「新しい視点」を届けることが何よりも重要だと感じていた。
当日朝、姉の家を8時45分に出た。朝食を終えるとQiang兄さん(お姉さんの婚約者)が一緒にトランクを駅まで運んでくれた。途中でふっかちゃん(深谷市のイメージキャラクター)まで見せてくれた。そして、電車の乗り方、待ち方、立ち位置などなど…姉もそうだが、Qiangさんも本当に細やかに教えてくれた。Qiangさんには心から感謝している。日本に到着したその日から私たち姉妹のために食事の用意や部屋の掃除、私の資料のコピーなどあらゆることを手伝ってくれ、何よりもコロナ陽性が発覚した姉の影響を受けないよう気を配り、私のフォーラム参加にOKが出るよう成し得る全てのことをしてくれた。
前日の午後と夜、恵美さんがメッセージをくれ、私からも電話した。Qiang兄さんは東京行きの電車に乗れるよう、駅まで連れて行くと約束してくれた。当日、電車の中からは恵美さんとViさんに乗車したことをメッセージし、10時45分ちょうどに電車を降りると、そこには恵美さんとViさんが待っていてくれた。とっても感動。恵美さんを長い時間抱擁した。
JICAは大きな会場だった。参加者のために机の上に資料を並べるのを手伝った。その後、ベトナムの民族衣装や様々な資料を飾った。ベトナムコーナーは出入り口を背に、ステージ右側に設置された。少しすると富美子さん、未来子さんなどAEFAの皆さんが続々と到着した。私たちはたくさんのお土産や温かい挨拶の言葉をいただいた。
未来子さんから「仕切りの裏側で待っていてね。司会者が名前を読んだら、一緒にステージに出てきてください」と言われた。仕切りの裏側で、私たちは谷川さんのあいさつを聴き、いよいよプログラムが始まった。司会の方からCSDメンバーの名前を呼ばれたので、私たちはステージに上がった。アインさんと未来子さんがステージに座る。ヒウさん、マイホア、カロットは客席右側の一番前にAEFAの谷川さんや亀井さんとともに座った。
アインさんの発表は自己紹介等の直後、プログラムのほぼ一番最初で、大切な部分を任された。私は客席側の一番前でアインさんの発表に耳を傾けていたが、とても刺激的で、称賛に値するものだったと思う。何かを自慢するわけでもなく、CSDやAEFAの過去の結果や成果を提示するようなものでもなかった。シンプルな座談会の形で、発表者と参加者の意見交換や共有、双方向的なやりとりのある場だった。学校建設の際には地域の人々や保護者にも参加してもらうこと、竹の稈や葉でできた簡素な校舎の話、コロナ期間中子どもたちが友人を失ったように感じる状況があったこと、そこからCSDが心理面・体力面での支援を行うプロジェクトを企画実施し始めたことなどを話したことが印象に残っている。私はタイアン小学校の児童たちが校舎の軒先で脚を前に出して輪になって遊んでいる写真が好きだ。何気ない写真からその背後にあるストーリーを紡ぎだす手法は、SNS上のマクロな情報や想像を絶する画像よりはるかに印象深いと思う。アインさんの語りはとてもシンプルにストーリーを描写していてとてもよかった。例えば「ここは教室の外にある廊下です。児童たちが雨風の心配をすることなく、男の子も女の子も一緒に、軒先で冗談を言い合いながら楽しく遊んでいます。こうした時間と空間こそが友情をはぐくみ、みんな等しく権利があることを知り、教育は平等なのだと知る場なのです。」というように。あの写真の風景は私の心にも残っている。皆さんの琴線にも触れるといいなと思う。
児童や先生方の話、学校の話を経て、アインさんの「生きがい」についてのシェアがあった。今の彼女をつくりあげたお父さまや先生などに対する感謝がさりげなく語られた。おかげで今も自分の好きな仕事をすることができ、人生のあらゆる領域で活かすことのできる貴重な知識や経験を積むことができ、その中にCSDがあるのだと語った。尊い話を自慢話にせず、簡潔につなぎ合わせていた。
発表が終わると、盛大な拍手が起こった。 “Everyone is welcome”の言葉が、皆さんの心に触れたのだと思う。あなたが誰であっても、ほんの小さなアイディアでも、ほんの少しの行動でも、どんな形であっても、あなたの貢献は歓迎されます、ということが伝わったのではないかと思う。
発表の後は亀井さんによる質問のまとめセッション。CSDは多くの興味深い質問をいただいた。例えば、言語の壁の問題、男子児童生徒が学校をやめてしまう問題、教員や学校に対する支援、地域と地域の教育に対する協力支援についてなど。亀井さんは情報を巧みに取りまとめて彼の視点を提供し、また、CSDからの質問への答えもまとめてくださった。
最後に亀井さんが、子どもたちが一歩一歩変化してきていることについて、核心をついた、現実に即した話をした。CSDが用いた輪が広がる図のように、子どもたちを中心に、一歩一歩、差を縮めようとしている。子どもたち一人一人が尊重され、創造的で主体的な一人の人間となれるように。総括の言葉に、私は鳥肌が立った。そして亀井さんの初めから終わりまで一貫性のある語り口に感服した。
東京での発表の後、CSDは多くの好意的なフィードバックをいただいた。フォーラムでアインさんの発表を聴き、大変感銘を受けた、と多くの方がおっしゃった。ニッコクトラストの馬田さんとはAEFA事務所でお会いしたが、ベトナムの教育について熱く語ってくださった。アインさんのプレゼンについては、2時間は話せる、とのことだった。ほかにも多くのお褒めの言葉を賜ったがとりわけAEFAから評価していただいたのがうれしい。谷川さんは満面の笑みを浮かべ、亀井さんはアインさんの方をたたいて「とっても良かった」とおっしゃった。亀井さんは支援者訪問時の車の中で、最後の方に出た、CSDの将来についての質問に言及した。亀井さんが“throw a ball” したのをアインさんがvery excellent にキャッチし、奨学金についてや後々故郷に貢献するのを助けたいことなどを話したのは素晴らしかった、とのことだった。フォーラムに出席できたことは大きな栄誉であったし、その反響の広がりとプラス効果は期待をはるかに超えるものだった。